勘・経験・度胸だけでは工場は破綻する!
データドリブンなものづくり
日本の製造業では勘・経験で現場をマネジメントするという手法が一般的でしたが、これは標準化されたマネジメントとは異なる属人的な手法です。これは昨今のデジタル化に逆行しており、今、必要とされるDX推進の妨げになりかねません。時代はまさに勘や経験ではなく、「データドリブン」という科学的なマネジメントを必要としているのです。
データドリブンとは、「経営やビジネスの課題に対し、データを取り入れた意思決定や判断をすること」であり、言い換えれば「勘や経験などというアナログではなく、データというデジタルを元に予測を行い、意思決定をする」という事であり、データを根拠に決める事といえます。
データドリブンでは、データの利活用を前提とした判断、業務遂行のために、生産管理システムやIoTなどでビッグデータを収集し、そのデータを可視化して予測、生産活動での意思決定を支援します。可視化では、BIツールなどを利用して、分析や予測が行いやすいように、ヴィジュアルな形でリアルタイムの情報提供を行います。また、近年ではAIの技術革新が目覚ましく、機械学習やディープラーニングを利用した予測、判断をおこなう事例も見受けられるようになってきました。
データドリブンで変わる3つの仕組み製造業のデータはアナログなものが多く、デジタル化が難しいことが特徴です。その為、データ連携の状況が可視化できず、業務プロセスがブラックボックス化されている企業が多いように思います。しかし近年のセンシングと通信の技術革新によって、比較的廉価で現場と基幹システムを繋ぐことができるようになりました。設備や工作機械の通信プロトコルが各メーカーによって異なる煩雑さで、稼働状況や実績データをリアルタイムに収集することが困難でしたが、IoTでセンシングしたデータを収集することで、意思決定に活かすことが容易になりつつあります。たしかに、収集されたデータは膨大ですが、AIやデータマイニングなどのIT技術を利用して、高速なデータ分析を行うことができるようになり、データドリブンなマネジメントの実現を支援しています。
データドリブンなマネジメントの実現で、製造業が得られるメリットは以下のようなものが考えられます。
<1>SCM(サプライチェーン管理)
サプライチェーンをデジタルかつリアルタイムに管理することにより、必要なものを必要な時に、必要な場所へ移動させ、欠品や過剰在庫を防止し、サービス率を大幅に高めることができます。また調達や物流などにかかるコストを削減することが可能です。
<2>ECM(エンジニアリングチェーン管理)
ECMとはエンジニアリングチェーン管理の略称で、マーケティングから設計・製造までのプロセスを統合的に管理する手法です。データドリブンなECMでは市場動向やニーズ、顧客における自社製品の稼働状況などのデータを設計や企画に反映させることで、新製品の立ち上げや既存製品の改善などのスピーディな実現が可能です。
<3>MES(製造実行システム)
MESとは生産計画に基づいて、現場への指示を行い、その進捗を統制するシステムです。データドリブンなMESができれば、現場の進捗に合わせたリアルタイムの計画変更やオーダーの原価・進捗の状況を把握し、より生産性を高める改善活動へと発展することができます。
データドリブンが実現すれば、製造業の永遠の課題といわれる標準化推進への期待が高まります。属人化された業務の減少は、工場のボトルネックの改善に繋がり、スループットの増大や品質の均一化などに繋がります。しかし、データドリブンは仕組みに合わせたデータを活用できるデジタル人材や組織の育成が重要であることも認識しましょう。
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